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月から太陽へ3

  • mycolorpart0
  • 5月23日
  • 読了時間: 13分

更新日:5月24日

あらすじ

喉の不調のためマネージャーから休業をす

るよう言われた望。しかし、SNSでは熱愛

を認めて休業をしたことに!?


「続報! 神楽R月野望、熱愛認め無期限

 活動休止」

望「え? どういうこと?」

画面をスクロールし「月野望」とタグ付け

された投稿には破壊された望のグッズやポ

スターが部屋で散乱する複数の画像。以下

投稿内容。

「さっさと卒業しろよ」

「死ねゴミ女」

「神楽にいらなくない?」

「つーかこの前渋谷で男と歩いてるの見か

 けたんだけど」

「ヤバ笑この写真前と違う男じゃん」

「この女メンタル強すぎ」

   望、叶人が宮下公園で歩く写真が拡

   散されている。

望「はあ、はあ、はあ……」

   望、携帯を床に落とし過呼吸になり

   、その場に座り込む。

望「なんで? どうして? 私何も……」

   望、身体を震わせ涙を浮かべる。


◯マンション・太田の部屋(夜)

   太田、ソファの前に立ち携帯を見

   る。

太田「え⁉︎ 熱愛認めて休業? じゃあ

 やっぱり……」

   ソファに座り頭を抱える。

太田「信じてたのに……」

   太田、望のポスターを見る。携帯の

   Xで「全部嘘、俺の時間を返せこの

   大嘘つき」と文字を打ちかけ手が止

   まる。


   ×   ×   ×


   フラッシュ。(曲名)T『未来へ』

   テレビでパフォーマンスをする望。


   ×   ×   ×


   太田、文字を消しソファに携帯を置

   く。

太田「はぁ……俺もそろそろ推し活卒業か

 な」


◯マンション・外観(夜)

   マンションの上に細い月。


◯同・望の部屋(夜)

   部屋には擦り減ったシューズ。机に

   喉の痛み止めの袋、横にある携帯が

   鳴る。

望「うぇ……はあ、はあ……」

   望、洗面所で嘔吐する。

望M「推されては叩かれて。その過程です

 り減る代替可能な消耗品。この7年、嫌

 というほど見てきた現実」

   望、洗面所の鏡を見る。

望「叩くくらいなら……最初から推さない

 でよ」

   チャイムが鳴る。モニターに朔の

   姿。


   ×   ×   ×


   望、朔、ベッドに座る。

朔「……大丈夫? 誰があんな投稿」

望「……疑ってないの?」

朔「怒るよ。私が望を疑うはずない。一生

懸命なあなたをずっと傍で見てきたから」

望「朔……」

   朔に抱きつく。朔、望の頭を撫で

   る。

朔「でもなんで? 休業のことなんて内部

 の人間しか。……心当たりは?」


   ×   ×   ×


   フラッシュ。稽古スタジオで向かい

   あい目を逸らし出ていく美雪の姿


   ×   ×   ×


   望、首を横に振る。


◯神楽Rの事務所・会議室

   望と茜、村雲が向かいで座る。

   茜、望に話しかける。

   望、顔を伏せて黙り込んでいる。

   茜、村雲顔を見合わせ困った顔。


◯同・外観

   望、建物からマスクをして出てく

   る。少し歩き、建物の窓に映る自分

   を見る。マスクをずらして顔を映

   す。

望「ひどい顔……」

   向かい側から大学生くらいの男の集

   団が笑いながら歩いてくる。

   その中の一人が望に気がつき。隣の

   男を叩く。

大学生1「なあなあ、あれってさ」

   望、視線に気づきマスクをして、足

   早に反対方向へ歩いていく。


◯渋谷・国道沿いの歩道

   望、早歩きで歩道を歩く。

   大学生の集団が追いかけてくる。

   望、角を曲がったところでタクシー

   を呼び止め乗りこむ。


◯タクシー車内

海野「どちらまで?」

望「はあ、はあ、とにかくすぐ出してくだ

さい!」

海野「え、あ、はい」

   海野、車を走らせる。


   ×   ×   ×


   車を走らせ沈黙が続く車内。

海野「落ち着きましたか?」

望「……はい」

海野「どうします? 行き先」

望「とりあえず渋谷の方戻ってもらって良

いですか?」

海野「かしこまりました」

   信号を曲がりUターンしていく。

   海野、車内で曲を流す。神楽Rの曲

   が 流れる。

望「この曲……」

海野「知ってます? 神楽R。僕はあんま

 り詳しくないんですが、友人が大ファン

 で」

望「そう……ですか」

海野「えっとなんて言ったかな? ほら、

 この前熱愛報道があった子」

望「……月野望」

海野「そう! 月野望。友人がその子の大

 ファンなんですよ。……でもこの前の記

 事を知った時は大分落ち込んでたな。だ

 から言ってやったんですよ。この際新し

 い推しを探せばって」

   望、窓の外を眺める。

海野「そしたらそいつなんて言ったと思い

 ます?」

望「……もっと若くて人気のある人に推し

 変する……とか?」

海野「ブッブー不正解」

望「え、クイズだったの」

海野「正解は、俺はまだ月野望を信じた

 い」

望「……」

海野「バカすよね。あったこともないの

 に、絶対に付き合えるわけないのにこ

 こまで応援して、グッズ大量に買って

 ライブに行って。僕なら絶対にできま

 せん」

望「その人はなんでその、月野望を応援し

てるんですか?」

海野「うーん。なんか命の恩人って言って

 ましたね」

望「命の恩人?」

海野「はい。そいつ今は明るくやってるん

 ですけどね、数年前まで凄く思い詰めた

 感じで。……今にも消えちゃいそうな」

   望、車内の窓に反射する、自分の顔

   を見る。

海野「そんな時に神楽Rの月野望を見て元

 気をもらったんだとか。ほんと単純なや

 つですよね」

望「単純ですね」

海野「でも、その時僕は何もそいつにして

 やれなかったんです。近くで友人の異変

 に気づいてたのに、自分に余裕がなくて

 何もしてあげられなかった。(笑いなが

 ら)その時は月野望に嫉妬しましたね。

 今でも恨んでます」

望「それはとんだ逆恨みですね」

海野「ホント逆恨みです。でもちゃんと感

 謝してますよ。親友を救ってくれてあり

 がとうって。そうだ今度握手会行ってお

 礼言いに行こうかな」

望「それは良いですね」

海野「……大丈夫ですか?」

望「?」

海野「お客さん……その時の親友と同じよ

 うな顔してたんで」

望「……」

海野「辛い時は無理しないで身近にいる人

 に頼るのが一番ですよ」

望「……ですね。……運転手さん行き先、

 変えても良いですか?」

海野「どうぞ。どこまでもお連れします

 よ」

望「じゃあ名古屋まで」

海野「はい名古屋ですね……名古屋?」

望「はい、名古屋。どこまでもっていいま

 したよね?」

海野「えー。確かにいいましたけど……」

望「ふふっ。冗談です。東京駅へ、お願い

 します」

海野「ふー。かしこまりました。飛ばしま

 すよー」

望「安全運転でお願いします」


◯東京駅・ロータリー

   望、海野が運転する車で東京駅へ到

   着する。

   望、バックを持って車から出てく

   る。

   海野、窓を開ける。

海野「じゃあお気をつけて」

望「ありがとうございました。あとこれ」

   望、海野へ封筒を渡す。

海野「これは?」

望「その親友の人に渡してあげてくださ

 い」

海野「(不思議そうに)え? あ、あり

 がとうございます」

望「では」

海野「行ってらっしゃい」

   望、駅へ向かっていくが立ち止まり

   引き返してくる。

望「あのー。名古屋行きの切符ってどうや

 って買うんでしたっけ?」

海野「へ?」

   海野の車の後方に赤い高級車が停ま

   る。

   赤い車の窓が開き車内でタバコを吸

   うGOが顔を出す。

   望、海野に頭を下げて駅へ向かって

   いく。

GO「ちっ、早くどけよ」

   GO、海野に向けてクラクションを

   鳴らす。

海野「おっと」

   海野、慌てて車を発進させる。


◯マンション・太田の部屋

   太田、パソコンを開き電話。

太田「はい、はい。分かりました。はい、

この度はご迷惑をおかけいたしました」

   電話を切るとすぐ着信が入る。

太田「もしもし。はいお世話になります。

その件ですが……」


   ×   ×   ×


   太田、キッチンでコーヒーを淹れ、

   机に運んで椅子に座り背もたれに深

   く寄りかかりため息。携帯が鳴る。

太田「またトラブルか?」

   太田、電話にでる。


◯渋谷・コンビニ

   太田、レジに並び会計をする。

店員「袋入りますか?」

太田「……」

店員「あの! 袋! 要りますか!」

太田「あ、す、すいません。お願いしま

す」

店員「950円になります。お支払いは

 ?」

太田「クレジットで」

   太田、携帯で決済をする。

店員「ありがとうございました」

   太田、買った袋を置いて立ち去ろう

   とする。

店員「お客さん袋、袋!」

太田「あ、すいません」

   太田、戻って袋を持ち出ていく。

   店員、出ていく太田を見て首をかし

   げる。


◯同・国道沿いの歩道

   歩道を歩く、太田。向かいから男の

   大学生の集団が歩いてくる。

大学生1「あれ絶対神楽Rの月野望だった

 よな? またいないかな」

   太田、歩いてくる大学生とぶつか

   る。

大学生1「いてっ」

   太田、そのまま歩き続ける。

大学生1「おい! ちょっと待てよ」

   太田、大学生1に後ろから肩を掴ま

   れる。

   太田、振り返るが、生気のない表

   情。

   大学生1、顔を見て一瞬驚く。

大学生1「て、てめえどこ見て歩いてんだ

 よ」

太田「……」

大学生2「ほっとけって。どう見ても関わ

 っちゃまずい奴だろ」

大学生1「ちっ」

   大学生1、太田から手を離す。

   太田、振り返り歩き出す。


◯マンション・太田の部屋

   太田、リビングに入ってきてソファ

   に座り目の前のテーブルにコンビニ

   の袋を置く。

   太田、家のチャイムが鳴るが動かな

   い。しばらく待つと何回もチャイム

   が鳴る。

   太田、立ち上がりモニターに向かう

   と海野の姿が映っている。

海野の声「よ。まだ生きてるか?」

太田「匠……」


   ×   ×   ×


   太田、ソファに座る海野に飲み物を

   渡す。

海野「どうしたどうした。なんか暗いぞ?

 やっぱまだ引きずってんの?」

太田「いや、まあそれもだけどさ」

海野「そうだ。これお前に」

   海野、封筒を太田へ渡す。

太田「何これ?」

海野「何かタクシーのお客さんにお前の話

 したらさ、渡して欲しいって」

太田「は? お前変なこと話してないよな

 ?」

海野「うーん。お前が神楽の月野望オタク

 だってことくらい。で、何入ってた?」

   太田、封筒の中身を取り出す。

   望が写る神楽R30枚目シングル

   「未来へ」のグッズ写真に「心に

   耳を傾けて、きっと答えはそこに

   あるから」と印字されたものが出

   てくる。

太田「これって未来への」

海野「あーやっぱあの人も神楽Rのファン

だったか。何か詳しい感じだったもん」

   太田、写真を見つめる。写真の裏を

   見るが何も写っていない。

太田「……」

海野「悪い。今もらっても逆効果だよな…

 …」

太田「いや、そっちもだけど、仕事の方も

 ちょっとあって」

   太田、パソコンがある机に歩きパソ

   コンを操作。

   海野、太田の後ろから画面を覗くと

   通販サイトが映し出される。

太田「SNSの運営を任された通販サイト

 がとんだ詐欺サイトでさ。全く、まいっ

 たよ」

海野「それって……大丈夫なん? お前捕

 まったりしないよな?」

太田「まだ本格化する前だったからなんと

 か。でもちゃんと調べてから仕事受けな

 いとな」

海野「気をつけろよ。お前らしくねえぞ」

太田「ああ……本当情けない。仕事にまで

 影響出ちゃうなんてさ」

   太田、部屋のグッズを見渡す。

太田「俺もそろそろけじめつける時がきた

 かな」

   太田、手に持った写真を見つめる。


◯名古屋

   名古屋駅の外観。


◯同・ロータリー

   望、マスクと帽子を被り一人で立

   つ。

美華「望」

   望、顔を上げると美華が車から顔を

   だし手を振る。


◯同・望の実家・リビング

   望、テーブルの椅子に座っている。

   美華、台所から望の話かける。

美華「もう、ビックリしたわよ。急に帰っ

 てくるって連絡くるから」

望「ごめんって。でもほら、帰ってきなさ

 いってこの前言ってたし」

美華「それは確かに言ったけど」

   美華、テーブルに芳光のわらび餅を

   置く。

望「え? 買ってきてくれたの?」

美華「ううん。私が内緒で食べようと思っ

 てたの」

   美華、笑顔でこたえる。

望「何それ、ずるい」

美華「さ、今のうちに食べちゃお」

望「うん。」


◯同・同・玄関

   叶人、制服姿で玄関の扉を開き帰っ

   てくる。

   望の靴が置いてあることに気が付

   く。

叶人「え、姉ちゃん?」


◯同・同・リビング

   叶人、リビングに入ってくる。

美華「あら、早かったわね」

望「叶人、おかえり」

叶人「おかえりって。姉ちゃんいつ帰って

 きたの?」

望「いつって、さっき?」

叶人「ってかまた芳光食べてんの? この

 前俺が東京いった意味」

望「まあまあ、叶人も食べる?」

叶人「……食べる」


◯同・同・洗面台(夜)

   望、パジャマでドライヤーで髪を乾

   かす。


◯同・同・リビング(夜)

   望、リビングに入るとテーブルで月

   野浩司がソファで新聞を読んでい

   る。

望「お父さん……いつ帰ってきたの?」

浩司「ん? いつって、さっき」

   望、少し離れた椅子にコップを持っ

   て座る。

望「お母さんは?」

浩司「何か明日の朝食買い忘れたってスー

 パー行っちゃったよ」

望「ふーん。相変わらずちょっと抜けてる

 よねお母さん。自分の芳光はちゃっかり買

 いに行ってるのに」

浩司「芳光? 和菓子の?」

望「うん。今日帰ってきたらお母さん自分

 のために買ってきたの出してくれたよ?」

浩司「……母さんな、実はそんなに甘いの

 好きじゃないぞ」

望「え?」

   浩司、新聞を見たまま沈黙が続く。

望「私……アイドルやめようかな。今更だ

 けど私アイドルに向いてないのかも」

浩司「……」

望「頑張ったってセンターにはなれないし

 、してもいないことでネットで叩かれる

 し、街で追いかけられるし……皆に心配

 かけちゃうし」

   浩司、新聞を置く。

望「(泣きながら)何で皆何も聞いてこな

 いの? こんなに皆に迷惑かけてるの

 に。お母さんは優しいし、叶人だって私

 のせいで画像がネットにあげられたのに

 いつも通り話してくれるし」

   沈黙が続く。

浩司「父さんな昔、歌手になりたかったん

 だ」

望「……何それ。初耳なんだけど」

浩司「そりゃ、初めて言ったもん」

望「……どんな歌手……目指してたの?」

浩司「当時はバンドブームでな、バイトし

 て安いギター買って仲間集めて、曲作

 って。オーディションも何回も何回も

 受けた」

望「それで? 結果は?」

浩司「母さんと結婚して望が生まれた」

望「どういうこと? 結局上手くいかなか

 ったってこと?」

浩司「いや、父さんにとっては大成功だっ

 たよ。もしバンドで成功してたら今頃綺

 麗な女優さんと結婚してたかもしれない

 けど、母さんと出会って望や叶人と出会

 うこともなかったかもしれない。だから

 父さんにとっては今が大成功」

望「じゃあ……私はアイドルになって失敗

 だったかな?」

浩司「どうかな。成功か失敗かは結局のと

 ころ望次第だから。望は何でアイドルに

 なりたかったの? そこに答えがあるん

 じゃないか」


◯同・同・望の部屋(夜)

   部屋には至る所に神楽Rの昔のグッ

   ズが並べられている。壁には後藤光

   のポスターが貼られている。

   望、机で携帯を眺める。

   画面には後藤光との2ショット。

望「アイドルになった理由……か」


◯同・同・リビング

   テレビでニュース番組がついてい

   る。

   望、テーブルで朝食。

   美華がお弁当箱を持ってテーブルに

   くる。

美華「はい。今日帰るんでしょ? 持って

 きなさい」

望「うん。ありがとう」

テレビの声「昨日、名古屋市にある東山動

 植物園のトナカイ、カリーちゃんが惜し

 まれつつも亡くなりました」

望「え? トナカイっているの」

美華「ん? 何かいった?」

望「ううん、こっちの話。私ってほんと何

 にも知らないんだな」


◯同・同・玄関

   望、バックを持って靴を履く。

   美華が見送りに来る。

望「じゃあ、いってきます」

美華「いってらっしゃい」

望「お父さんと叶人は?」

美華「お父さんは仕事、叶人は寝てる」

望「そう」

美華「本当に車で送らなくて大丈夫?」

望「大丈夫。じゃあね」

   望、玄関を出ていく。

   携帯に通知が入り。叶人からメッセ

   ージ「いってら」

   望、少し笑顔で歩き出す。


◯マンション・太田の部屋

   部屋にダンボールがあり中に望のグ

   ッズが入っている。

   太田、棚に置かれた望のアクリルス

   タンドをダンボールへ入れる。

太田「これも外すか」

   太田、壁にかけられたポスターを眺

   める。

太田「これで……いいんだよな」

   太田、ポスターを丁寧に外す。


◯神楽R・事務所・会議室

   T『39枚目シングル選抜発表』


 
 
 

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