ストレンジカメレオン前編
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- 5月25日
- 読了時間: 14分
更新日:5月29日

1〇 桐丘高校グラウンド
強い日差しに飛び交う金属バットの
音。
監督山田武(45)がノックを打
つ。
大野悟(18)汚れた練習着。
大野「はあ、はあ、お願いします」

山田「大野―声が小さーい!」
大野「お願いしまーす」
と声を出すが声が細く響かない。
山田「やる気あんのかー! お前からは情
熱を感じねぇぞ!」
大野「すいません。お願いします」
山田、首を傾げながらノックを打
つ。
大野、打球を追いかけ転ぶ。
山田「グラウンドで寝るなー!」
大野「すいません。もう一本」
大野、再び打たれたボールを追う。
2◯ サウス社・社内
「10年後」
白を基調とした広いオフィス空間に
様々な照明、ソファが綺麗に配置。
サウス社A社長(29)フロア見渡
し。
社長「いやー本当に凄いな」
スーツを着た大野悟(28)と奥田
蓮(24)が向かいに立つ。
大野「ご要望には全てお応えできたかと」
A社長「想像以上ですよ! 特にこのフロ
ア」
大野「デザイナーも施工部隊も自信作だ
と」

A社長「大野さん。本当にありがとうござ
いました。社員に見せるのが楽しみで
す」
大野「いえいえ、私は何も。今後ともバー
スをよろしくお願いします」
3◯ 居酒屋(夜)
テーブル席に座る大野、奥田。
奥田「(ビールを飲み)ぷはー! 大野さ
ん、 やりましたね!」
大野「ああ」
奥田「僕感動しました。初めて大きなプロ
ジェクトに携わって。あんなに喜んでく
れて。オフィスデザインって夢あります
ね!」
大野「そうだな」
奥田「相変わらずクールっすね大野さん
は」
大野「これでも結構喜んでるんだけど?」
奥田「本当ですか? 表情固くないです
か?」
女店員「ご注文の枝豆と唐揚げです」
奥田「実は僕ちょっと悩んでたんです。デ
ザイン会社って、こうもっとキラキラし
たイメージじゃないですか?」
大野「まあな」
奥田「でも営業は泥臭い体育会系って感じ
で」
大野「俺たち営業は企業とデザイナーの橋
渡しがメインの仕事だからな」
奥田「企業の要望聞いて、デザイナーと打
ち合わせ。プラン提案して予算組み直し
て工事手配して。結構体力要りますよ
ね」
大野「言われてみれば体育会系か」
奥田「ですよね。でも今日……なんか全部
が報われた気がします」
奥田、少し涙ぐむ。
大野、淡々と枝豆を食べる。
奥田、呆れた表情で大野を見つめ
る。
大野「ん? どうした?」
奥田「大野さんって山中さんとは真逆のタ
イプですよね。確か同期だとか?」
大野「そ、でも今じゃあいつは上司。奥田
から見てその……どう? 山中」
奥田「どうって。やっぱ凄いと思います。
若いのにプロジェクトマネージャー任さ
れて。仕事に対しても何ていうか情熱的
ですし」
大野「情熱的……ね」
× × ×
フラッシュ。
10年前の高校のグラウンド。
山田「お前からは情熱を感じねぇぞ!」
× × ×
奥田「そういえば聞きました? 来月から
新しいデザイナーが入社するらしいっす
よ」
大野「へえー」
奥田「なんでも、天才クリエーターだと
か」
大野「天才ねえ……」
4◯ 公園(夜)
大野、帰宅途中、公園前を通る。
公園からジャージを着た小川亮二(
17)が飛び出してきてぶつかる。
小川「すいません! 大丈夫ですか?」
大野「ああ大丈夫、大丈夫。君は?」
小川「全然。大丈夫です」
大野「こんな時間に練習? 頑張ってね」
小川「はい! ありがとうございます」
小川、走り出す背中に桐丘高校の文
字
5◯ 汐留ビル・外観
都会に聳え立つ超高層複合商業ビ
ル。
6◯ 同・エレベーター内
大野、エレベーターの17階を押
す。
閉まりかけたドアが開き立花美嘉(
26)が入ってくる。
美嘉「すいません!」
扉が閉まりランプが1、2、3と動
く。
美嘉「不思議な青……」
大野「え?」
美嘉「あ、いえ」
美嘉、両手を横に振る。
大野、首をかしげる。
7◯ 同・バースオフィス
大野、扉が開き美嘉を先に降ろす。
大野、後に続いて出ていく。
広々としたオシャレなオフィス。
カジュアルスーツの社員達が仕事
中。

奥田「大野さん。おはようございます!
……今一緒に来た女性って」
大野「な。あんな子うちにいたっけ?」
二人の視線の先に美嘉が歩く姿。
大野「そういえば今日だったよな? 会
議」
奥田「はい。社長も同席するらしいです
よ」
大野「えっ? 珍しいな」
8◯ 同・同・会議室
大野、奥田、ガラス張りの会議室
へ。
大野「失礼します」
中に派手な緑のスーツの山中達也(
28)と美嘉、社長の生嶋一成(5
0)

生嶋「おー大野。頑張ってるか?」
大野「社長、ご無沙汰しております」
生嶋「相変わらず固い男だな。まあ座れ」
大野、奥田、席につく。
山中「よし、これから早速新規プロジェク
トの話をしたいんだが、その前に2人に
紹介したい人がいる。立花さんよろしく」
美嘉、立ち上がる。
美嘉「今日からバースにデザイナーとして
入社した立花です。よろしくお願いしま
す」
生嶋「彼女若いけどな、才能は俺が保証す
る。なんたって俺が直々にスカウトした
天才だ」
美嘉「(慌てて)全然天才とかそんなんじ
ゃ」
山中「では社長、紹介も済んだことですし
プロジェクトの方は私にお任せを」
山中、片手を胸に当て会釈。
生嶋「おうそうか。じゃああとは任せた
ぞ」
生嶋、山中の肩を叩き出ていく。
山中「よし、じゃあ早速始めるか」
× × ×
モニターに古びた町工場が映され
る。
外観には「中村金属」という看板。
山中「今回はこの町工場のリニューアルを
このメンバーで取り掛かる」
大野「町工場か」
山中「今年から社長に就任したのが先代社
長の息子、中村太一さん。その新社長が
うちの生嶋社長と知り合いらしいんだ」
奥田「なるほど、それで社長が。これは失
敗できませんね」
大野「それはどこの現場でも一緒だろ」
山中「お前な、そんなこと言ってるからい
つまで経っても。いいか、これは社長直
々の案件。何が何でも成功させんの」
大野、黙り込む。
山中「立花さんにとってもバースでのデビ
ュー戦。大丈夫、俺がフォローするか
ら」
美嘉「はい……」
大野、山中を見て呆れた顔。
9◯ 中村金属・外観
T「打ち合わせ初日」
大野、奥田、美嘉、地図アプリを見
ながら中村金属の看板を見つける。
奥田「あ、ありました。あそこっすね」
大野「少し早いか」
奥田「思ったより会社から近いですね。僕
ちょっと見てきますね」
奥田、中村金属へ走る。
大野、緊張気味の美嘉を見る。
× × ×
回想。
バース会議室。
山中「初回打ち合わせ。大野、奥田任せた
ぞ」
大野「お前は?」
山中「俺は別件で忙しいんだよ」
美嘉「あのー……」
と、ゆっくり手をあげる美嘉。
美嘉「それって私が行っても?」
山中「最初は要望簡単に聞いてくるだけだ
から。デザイナーは行かなくても大丈
夫よ」
美嘉「いえ。是非行かせてください!」
山中「(戸惑いながら)お、おお分かっ
た」
× × ×
大野「立花さん」
美嘉「はい!」
大野「深呼吸」
美嘉「へ?」
大野「ほら」
大野、大袈裟に深呼吸をする。
美嘉、戸惑いながら一緒に深呼吸。
奥田、戻ってきて二人を見る。
奥田「……え、なに?」
10◯ 同・作業場
古い扉を開けると、見慣れぬ機械。
高齢の作業員達の作業音が鳴り響
く。
しばらく入り口で作業を見る3人。
そこへ中村太一(35)がやってく
る。
大野「こんにちはバースの大野です。本日
はよろしくお願いします」
太一「代表の中村太一です。さ、中へ」
太一について行く3人。
大野、横目に中村浩三(65)が真
剣な顔で作業をしている姿が目にと
まる。
11◯ 同・事務所
それぞれ席に着く。
扉を雑にノックする音が鳴り無愛想
な女性がお茶を雑に置く。
大野たち少し戸惑う。大野、飾られ
た創業時の古い写真を見る。
大野「歴史ある会社なんですね」
太一「歴史だけは。私で3代目になりま
す」
大野「確か今年から社長に就任されたと
か?」
太一「ええ、実は2年前までよそに勤めて
まして。ここを継ぐために帰ってきたん
です」
大野「そうでしたか。……早速ですが今回
なぜリニューアルを?」
太一「はい。実はこの一年会社の状況を見
てきて……このままではうちの技術どこ
ろか会社自体無くなってしまうのではな
いかと危機感を覚えまして」
奥田「え? 何か問題でも?」
太一「うちは金属加工をメインにお陰様で
たくさんの依頼を頂いてます。ただ…
…」
大野「ただ?」
太一「見ていただいた通り工場はボロボ
ロ、おまけに従業員の高齢化も……」
奥田「ああ、確かに」
大野、机の下で奥田の足を軽く蹴
る。
奥田「痛っ」
太一「皆さん技術は高いです。ですがこの
先10年、20年を考えると……」
大野「なるほど。つまり今回オフィスデザ
インで新たな若い人材も増やしていきた
いと」
太一「そうなんです! こんな古い工場で
働きたいと思う若者なんていないですか
ら」
美嘉「(ぼそっと)なるほど。そういうこ
と」
美嘉、メモをとる。
太一「この先どうしようか悩んでいる時、
バースの生嶋社長のことを思い出し
て」
大野「生嶋とはいつ頃?」
太一「もう20年くらい前ですかね。私が
当時勤めていた会社のオフィスリニュー
アルをしていただいたんですよ」
奥田「20年前だとうちも創業したてです
ね」
太一「その時の感動を今の社員にも味わっ
てもらいたいんですが……」
太一、不安な表情を見せる。
作業場から怒鳴り声が聞こえてく
る。
浩三「(怒鳴り声)とっとと出てけ!」
怒鳴り声に気が付く4人
奥田「なんだ?」
12◯ 同・作業場
作業場に出てくる大野たち4人。
尻もちをつき怯えて浩三を見る山
中。

太一「親父……」
大野「えっ?」
奥田「山中さん? 一体どうしたんすか
?」
奥田、山中に駆け寄り手を貸す。
山中「そんなの俺が聞きてぇよ。俺はた
だ」
13◯ (回想)・同・同
山中、作業場へ入ってくる。
山中N「予定が変わって少し顔を出そう
と」
山中、作業中の浩三を見つけ近寄
る。
山中「こんにちはー。私バースの山中と申
します。リニューアルの件でお伺いしま
した。工場内の写真少し撮らせてもらい
ますね」
山中、工場内をスマホで撮り始め
る。
山中、机にぶつかり、工具が床に落
ちるが気にせず写真を撮り続ける。
浩三、山中のスマホを取り上げる。
山中「ちょっと、何するんですか?」
浩三「出てけ」
山中「え?」
浩三「(怒鳴り声)とっとと出てけ!」
浩三、山中を突き飛ばす。
14◯ (戻って)・同・同
山中「このオヤジがいきなり」
太一「親父……まだ反対なのか?」
山中「おやじ?」
大野「社長こちらの方は?」
太一「私の……父です」
山中「えっ? 社長のお父様、つまり…
…」
太一「はい、中村金属の先代社長です」
T「2代目社長・中村浩三」
浩三、険しい顔。
15◯ 同・外観
外で話す大野ら4人と太一。
太一「父は社長を辞めてからもああして現
場に出てまして。今でも腕は一流です
し、この仕事に誇りを持っているんで
す。……ですが、リニューアルには反対
のようで」
大野「……理由を聞いても?」
太一「実はそれが私にも……」
山中「でも、今の社長は太一さんなんです
から決定権は太一さんにあるんですよね
?」
太一「まあ、形式上はそうですが……」
大野「一度お父様も交えて具体的なプラン
を提案させていただけないでしょうか
?」
太一「ぜひ。私ももう一度説得してみま
す」
大野「では今日は一旦これで」
大野たち、現場を後にする。
16◯ 同・バースオフィス・会議室(夜)
テーブルに大野、奥田、美嘉、山
中。
山中「で、太一さんとはどんな話を?」
大野「太一さんは工場の老朽化。そして従
業員の高齢化を気にされていたな」
山中「それから?」
大野「それからって……まだそれだけだ
よ」
山中、わざとらしくため息。
山中「お前な、そんな情報だけでどうやっ
てプラン考えて説得すんだよ」
大野「(呟く)お前がトラブル起こすから
だろ」
山中「奥田。お前もそう思うだろ?」
奥田「いや、はい、まあ……」
山中「社長案件だぞ? 真剣に向き合おう
ぜ」
大野、黙り込む。

山中「(優しい口調)ごめんね立花さん。
これじゃ良いアイデアも浮かばないよ
ね?」
美嘉「いえ、2つくらいは」
山中「そうでしょ……って、え? 2つ
?」
美嘉「はい。でももう少しプランまとめて
からお伝えしたいのでお時間いただけま
す?」
山中「あ、ああ。もちろん。じゃあ俺が…
…」
美嘉「大野さん。打ち合わせお願いできま
す?」
大野「え? 俺?」
山中「立花さん、こいつじゃ役に立たない
よ?」
美嘉「いえ、現場で一緒に社長と打ち合わ
せしたのは大野さんですし。ダメですか
?」
大野「……俺は構わないけど」
山中「立花さんがそういうなら。奥田行く
ぞ」
奥田「え? 僕も打ち合わせに……」
山中「いいから行くぞ」
奥田「はい!」
山中、部屋を出ていく。
奥田、急いで荷物を持って追いかけ
る。
扉が閉まり残された二人。
大野「……じゃあ改めてよろしく」
美嘉「はい! お願いします」
大野「まず解決したい課題は」
美嘉「工場の老朽化と従業員の高齢化です
ね」
大野、頷く。
大野「ここは叩きのプランを提案する中で
もう少しヒアリングが必要だな」
美嘉「ですね」
大野「あともう一つ鍵になるのは」
美嘉「先代社長ですね」
美嘉、食い気味に答える。
大野「まずは反対理由を知らないとな」
美嘉「了解です!」
17◯ 新橋のバー
カウンターに座る山中、奥田。
奥田「二人に任せといていいんですか?」
バーテンダーがカクテルを作りグラ
スの中の色が変わっていく。
山中「覚えとけ。できる人間はな、自分か
ら動いちゃいけねぇんだ。人を動かして
操るのが上に行く奴と、そうじゃない奴
の差だ」
山中、差し出されたグラスを回して
カクテルを飲む。

奥田「なるほど」
奥田、山中の真似をする。
18◯ 居酒屋(夜)
テーブル席に座る大野、美嘉。
美嘉「ここ、よく来るんですか?」
大野「たまにな」
美嘉「へえー」
美嘉、ビールを飲み干し2杯目を頼
む。
美嘉「あ、すいません同じのもう一つ」
大野、驚く。
大野「……ところでなんで打ち合わせ相手
に俺を? 悪いけどあんま役に立たない
よ?」
美嘉「そんなことないです。大野さんの打
ち合わせとても参考になります。それに
……」
大野「それに?」
美嘉「山中さんみたいな人信用できないん
で」
大野、驚く。
美嘉「ん? どうかしました?」
大野「いや。山中を最初からそんな風にい
う人あまりいないから。あいつ外面は良
いし」
美嘉「私人間観察が昔から得意っていう
か。……大野さん、共感覚って知って
ます?」
大野「きょーかんかく?」
美嘉「はい。文字とか人に色が見える感覚
のことで、私その共感覚持ってるんで
す」
大野「へぇー。オーラ? みたいな?」
美嘉「うーん。なんていうか」
美嘉、タブレットに絵を描き始め
る。人の形をした絵の周りに赤色で
影のような物を加えていく。
美嘉「こんな風にモヤが見えるんです」

大野「なるほどね。色に意味は?」
美嘉「うーん。あったり無かったり。あく
まで私が感じたイメージなんで。でも色
がコロコロ変わる人は昔から信用できな
いんです。それが山中さん」
大野「面白いな。ちなみに俺は?」
美嘉「青。ですね」
大野「あーだからあの時」
× × ×
フラッシュ。
オフィスのエレベーター。
美嘉「不思議な青……」
× × ×
大野「青か。冷めた俺にはぴったりの色
だ」
美嘉「うーん。確かに青はクールなイメー
ジなんですけど、大野さんの青はなんて
いうか……他とは少し違うんですよね」
大野「?」
美嘉「普通は気分とか体調で色が少し変化
するんです。でも大野さんはずっと深い
青」
大野「まるで出来損ないのカメレオンだ
な」
美嘉「カメレオン?」
大野「周りに合わせて色を変えられる山中
がカメレオンなら、俺はその出来損ない
だなって。昔から上手く周りの色に馴染
めないっていうか」
美嘉「分かります。私もこんな体質なんで
……小さい頃、皆も同じように色が見え
てるって思ってたんです」
19◯ (回想)小学校・教室
18年前。
小学校の教室で絵を描く生徒たち。
美嘉(9)絵の具で友達佳奈の絵を
描く。
絵にオレンジ色の影を描く。
佳奈、美嘉の絵を見にくる。
佳奈「何これ? なんでオレンジ?」
美嘉「だって佳奈ちゃんはオレンジでし
ょ?」
佳奈「私別にオレンジ好きじゃないよ?」
美嘉「そうじゃなくて……ねえ、佳奈ちゃ
んの周りにオレンジ見えるよね?」
美嘉、隣の友達に尋ねる。
友達1「え? 美嘉ちゃん何言ってるの?
……お化けでも見えてるの?」
ざわざわとし始める教室。
先生「ほらそこ、静かに」
美嘉、自分の絵を見つめる。
20◯ (戻って)・居酒屋(夜)
美嘉「それ以来学校ではずっと変な子扱
い」
大野「……」
美嘉「あ、でも今は感謝してるんですよ。
人と違う世界が見えるってクリエーター
にとって最高の武器だと思いません?
社長もこの共感覚のこと評価してくれま
したし」
大野「そうだな。最高の武器だよ」
美嘉「ですよね!」
美嘉、笑顔でビールを飲む。
21◯ 歩道(夜)
大野、酔い潰れた美嘉を支え歩く。
大野「これ本当に天才デザイナーか?」
と、美嘉を見ながら呆れる。
山田武(55)とすれ違う。
山田、大野に気がつき声をかけてく
る。
山田「ちょっと、ちょっと君」
大野、振り返る。
山田「やっぱそうだ。俺だよ俺」
大野「野球部の……山田監督?」
山田「そう! 俺だよ! えっと大山」
大野「大野です」
山田「そうそう、大野。冗談だよ冗談」
山田、大野の肩を叩き豪快に笑う。

大野「絶対忘れてたでしょ」
山田「えーっと……その子は?」
大野「ああ、同僚です。潰れちゃって」
美嘉「(吐きそうになる)うっ」
山田「大丈夫か? あっそうだ。お前土曜
空いてないか?」
大野「土曜ですか? 仕事は休みですけ
ど?」
山田「よし。お前野球部手伝いに来い」
大野「は? 普通に嫌ですよ」
山田「いやー俺も年でよ。腰やっちゃっ
て。頼む。ノック打つだけでいいから」
大野「でも補欠だった俺なんかが行って
も」
美嘉「(泥酔状態で)グダグダ言ってない
で行けばいいじゃないですか」
美嘉、支えられながら口を挟む。
山田「よし決まり。土曜一時にグラウンド
な」
山田、帰っていく。
大野「ちょっと! 待ってくださいよ!」
大野、呼び止めるが、美嘉のせいで
動けない。潰れた美嘉を見てため
息。



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