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月から太陽へ4

  • mycolorpart0
  • 5月24日
  • 読了時間: 8分

あらすじ

活動に疲れ実家へ帰省する望。

ショックから仕事に支障がで始める太田。

そんな中ついに出くわす望と太田2人。


◯神楽R・事務所・会議室

   T『39枚目シングル選抜発表』

   会議室で座る神楽Rメンバー。数台

   のカメラ。呼ばれたメンバーが前へ

   移動。

司会の男「3列目15番、今井美雪」

美雪「はい」

   望、前に行く美雪を見る。


   ×   ×   ×


   望、発表が終わり座ったまま。

   前に並ぶ美雪を含めた選抜メンバ

   ー。

司会の男「39枚目は以上のメンバーで

 す」


◯稽古スタジオ

   望、レッスン着でスタジオ入りす

   る。近づいてくる永遠。

永遠「望。大丈夫? 喉の方は?」

望「まだ……でもダンスはできるんで」

永遠「そう。大丈夫! ライブまでには治

 る」

   去っていく。奥の方で話す後輩達。

後輩1「今回の選抜、望さんと美雪さんが

 入替わったって感じだね」

後輩2「なんかいつもすれ違ってるよね」

後輩1「ね。2人とも優しくて良い先輩な

 のになんで不仲説なんか」


◯(回想)・神楽R・会議室

   T『3年前』

   望、メンバーに囲まれる。

朔「望、初選抜おめでとう!」

永遠「おめでとう。良かったね」

   望、顔を手で覆い頷く。

   美雪、奥で1人涙を流す。

望M「3年前。美雪と入れ違うように初選

 抜」

   T『1期生 後藤光(29)』美雪

   の元へやってくる。

光「美雪。泣かないの」

美雪「私……光さんの最後のシングル……

 一緒に活動したかった」

光「ありがと。でも卒業コンサートまでは

 まだたくさん時間あるから。ね?」

   美雪を抱きしめる。

   遠くで見る望。

望M「光さんにいつも可愛がってもらって

 る美雪が羨ましかった。でも美雪が光さ

 んを大好きなのも知ってた。だからつい

 あんな言葉」

   望、美雪に近づく。気づく美雪。

美雪「望……。選抜おめでと」

   涙を拭い笑顔で話す。

望「美雪……ごめん私」

美雪「……ごめんって……なに?」

   笑顔が消える。

望「いや、そうじゃなくて……」

   美雪、立ち上がり去っていく。


◯(戻って)・稽古スタジオ

   靴紐を結ぶ望の視線に美雪。

   目が合い、望の方から目をそらす。


◯同・望の部屋(夜)

   望、ゴミを持って玄関へ。引き返し

   てマスクと帽子をつけて玄関を出

   る。


◯同・ゴミ捨て場(夜)

   望、ゴミ捨て場へ。太田、望のグッ

   ズが入った段ボールを抱え立ってい

   る。

   望、顔を見て「お隣さん」と気づ

   く。

望「あのー」

   太田、驚き振り返る。

望「それ……捨てちゃうんですか?」

太田「えっ、これ?」

   望、頷く。

太田「……迷ってます……かれこれ1時

 間」

望「1時間⁉︎」

太田「1時間」

望「ここで?」

太田「ここで」

   太田、沈黙の後、口を開く。

太田「神楽R……お好きですか?」

望「はい……大好きです」

太田「じゃあ知ってますよね? 月野望」

望「まあ、人並みに……」

太田「実は3年前。僕、彼女に救われたん

 です」

望「3年前?」

太田「はい3年前。仕事が辛くて鬱になり

 かけてたんです。ほんと、今思い返した

 だけでも辛くて。電車に飛び込もうとし

 たこともあったんです。あっすいません

 突然こんな暗い話。興味ないですよね?」

望「いえ……それで?」

太田「それである日テレビをつけたら偶然

 神楽Rの30枚目シングルの選抜発表で」

望「30枚目……。未来へ……」

太田「そう! 未来へ!」

   望、太田のテンションに驚く。

太田「あ、すいません。つい」

   望、首と手を横に振る。

太田「その時、歌って踊る彼女の、月野望

 の笑顔を見てたらなんか……涙が止まら

 なくて」


   ×   ×   ×


   フラッシュ。

   衣装を着て歌って踊る笑顔の望。


   ×   ×   ×


太田「僕にとっての太陽でした。それから

 彼女を応援することが生き甲斐で、大袈

 裟じゃなく、人生を変えてくれたんです」

望「(小さく呟く)太陽……私が?」

太田「でも今回のスキャンダルで気づいた

 んです。勝手に理想を押しつけてるどう

 しようもない自分に。当たり前だけどア

 イドルだって恋愛をする普通の人間なの

 に。ほんと痛いオタクですよね?」

望「あの投稿……あなたは信じてるんです

 か?」

太田「え? 僕だって初めは信じてません

 でしたよ。でも、どんどん新しい情報が

 出てきて」

望「信じちゃダメ。なんで皆……あんな出

鱈目……」

太田「えっ、でも」

望「でもじゃない! あなたファンでしょ

 ?なら最後まで推しを信じなさいよ!」

   一瞬の静寂。

太田「君……もしかして?」

   望、慌てて斜め下を向き顔を伏せ

   る。

太田「同担?」

   T『同担=同じアイドルを推してる

   ファン』

望「へ?」

太田「そうだよな。君の言う通り。最後ま

 で信じてあげるのが本当のファンだよ

 な」

   望、ほっとして頷く。

太田「決めた。俺は最後まで月野望を信じ

 る。それが俺を救ってくれた彼女へのせ

 めてもの恩返し。まあ、俺一人信じたと

 ころで何も変わらないかもしれないけど」

望「……そんなことないよ(小さく呟く

 )」

太田「よーし。こうなったら早く帰って月

 野望応援アカウント作らないと」

   太田、段ボールを抱え帰っていく。

太田「そうだ、はい。これ」

   太田、振り返って望に写真を渡す。

太田「お礼。君のおかげで元気出た」

   太田、部屋に帰っていく。

   望、太田を見送り写真を見ると望の

   グッズ写真に「心に耳を傾けて、き

   っと答えはそこにあるから」と印

   字。

望「これ、未来への……もしかして」


◯同・望の部屋(夜)

   望、貰った写真を持ちベッドに座

   る。

望「私、あの人のこと救ってたんだ」

   壁の方を見る。微かにライブDVD

   の

   音が漏れ聞こえる。

望「そうだ私……」


◯(回想)・中学校校門

   T『9年前』

   望(13)、制服で中学校の門の前

   に立ち一歩踏み出してから引き返

   す。

望M「中学に入ってすぐの頃、上手く学校

 に馴染めなかった」


◯望の実家・リビング

望M「そんな私を救ってくれたのが神楽

 R」

   望、テレビを見る。テレビに映りパ

   フォーマンスする後藤光(23)。

   望、パフォーマンスに目を輝かせ

   る。


◯中学校・教室

   望、教室で友達と笑顔で話す。

望M「神楽Rをきっかけにできた友達とカ

 ラオケ行ったり、ライブ行ったり。気づ

 いたら毎日学校に行くのが楽しみになっ

 てた」


◯(戻って)マンション・望の部屋(夜)

「未来へ」のジャケットの光を見る。

望M「私が救われたように、私もアイドル

 になって誰かを救いたい。そう思ってア

 イドルになったんだった」

   望、写真の文字「心に耳を傾けて、

   きっと答えはそこにあるから」を見

   る。

望「よし。私も決めた」


◯同・太田の部屋(夜)

   太田、パソコンの前。Xの画面「月

   野望応援アカウント」フォロワー0

太田「よし、完成。あとはアイコンどうし

 よ」

   太田、バックについた望のグッズの

   四角い缶バッチを見つめる。

太田「これにするか」

   太田、缶バッチを写真に撮り、アイ

   ンコに設定にする。


◯名古屋・望の実家・リビング

   叶人、ソファで携帯をいじっている

   とメッセージ通知が入る。

   画面に「これ知ってる?」というメ

   ッセージと共にリンクが送られてく

   る。叶人、リンクをタップすると。

   Xの月野望応援アカウントが表示さ

   れる。フォロワー122人。

叶人「なんだこれ? ん?」

   叶人、起き上がりアイコンを見る。

叶人「これってもしかして?」

   叶人、財布から太田の名刺を取り出

   し眺める。

   叶人、フォローをタップしフォロワ

   ーが123人になる。


◯マンション・太田の部屋

太田「よし、増えてきた増えてきた! ん

 ?」

投稿にコメント「痛いファン乙」「キモオ

 タの妄想垢」。

太田「やっぱ根本原因を取り除かないと

 な」

   XでGOのアカウントへ。ヘッダー

   は東京駅を背景にした赤い高級車。

   望の投稿を探す。

   リークされた写真とトークが出てく

   る。

太田「このトーク、なんか月野望っぽくな

 いんだよな。ん?」

   トーク画面上部に「4/2」。

   カレンダーをめくり、4月2日

   のところに丸印と「記念日」。

太田「この日は病院で……やっぱ捏造だ

 !」

   太田、喜ぶがすぐ冷静に。

太田「いや俺だけが知っててもダメだ。何

 か決定的な証拠を掴んで拡散しないと。

 それに……この渋谷での2ショット画像

 ……なんか引っかかるんだよな」


◯神楽R・事務所・廊下

   望、携帯を見る。画面に望応援アカ

   ウント。フォロワー608。


◯(回想)・マンション・望の部屋

   望、携帯を見てダンスの練習。

   携帯に叶人から通知が入る。

   メッセージを開くと「これ太田さん

   かも」

   というメッセージと月野望応援アカ

   ウントのリンクが送られてくる。

   リンクを開くと缶バッチのアイコン

   が目に入る。


◯(戻って)神楽R・事務所・廊下

   望、携帯をしまい、ドアに手をかけ

   る。


◯同・同・会議室

   会議室に着席するメンバー。

茜「来月はいよいよライブ。そして今日か

 ら望が休業から復帰です。望、一言」

   望、立ち上がり前へ。視線が集ま

   る。

望「ご心配おかけしました。今日から活動

復帰しますのでよろしくお願いします」

   望、頭を下げる。メンバーから拍

   手。

望「……もう一つ良いですか? 私……」

   一瞬の静寂。驚いた表情をする、美

   雪、永遠。清々しい顔をした望。


◯同・同・廊下

   美雪、応援アカウントを見る。フォ

   ロワー2004人。そこへやってく

   る望。

美雪「待って。ねえ……どうして?」

望「美雪。もう……私の夢は叶ったから。

 最後までよろしくね」

   望、微笑み通り去る。

   美雪、携帯でトークアプリに文字を

   打ち込む。「相談したいことがある

   んですけど」


◯東京駅近くの道路・海野の車(夜)

   停車した車の運転席に海野、助手席

   に太田。窓の外を見て何かを探す2

   人。

海野「いたか?」

   海野、手にプリントしたGOのヘッ

   ダー画像。

   太田、首を横に振る。

太田「絶対見つけて問い詰めてやる」

海野「ガソリン代は請求するからな」

   海野、ラジオをつける。

芸人の声「さあ、今週も始まりましたサタ

 デードリーム。早速ですが今週から望ち

 ゃんが復帰でーす」

太田「しまった。今日から復帰か」

   太田、ラジオの音をあげる。


◯ラジオブース(夜)

望「こんばんは。神楽R月野望です」

芸人「おかえり望ちゃん。早速だけど望ち

 ゃんからリスナーの皆に大切なお知らせ

 です」

望「はい。私、月野望は……」


◯東京駅近くの道路・海野の車(夜)

望の声「神楽Rを……卒業します」

太田「えっ……?」


 
 
 

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