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月から太陽へ1

  • mycolorpart0
  • 5月22日
  • 読了時間: 16分

更新日:5月24日

あらすじ

1人の女性アイドルとそのファンの男が、炎上騒動に翻弄され立ち向かっていくストーリー


〇マンション・外観

   高層マンションの外に引越し業者の

   車。

   

◯同・6階通路

   ドアの横に「OTA」と書かれた表

   札。


〇同・太田の部屋

   部屋一面に国民的アイドルグループ

   神楽Rの月野望(22)のタオル、

   サイリウム、ポスターなどのグッズ

   に大きなテレビ、ダンボールが散ら

   かる。

   T『太田陽平(27)』が望のアク

   リルスタンドを飾る。

太田「よし! 完成っと」

   T『海野匠(27)』奥から現れ

   る。

海野「陽平ー、俺もう帰って大丈夫?」

太田「おお、ありがと匠。礼はまた今度」

海野「いいって。しかし……見事なオタク

 部屋。これ。誰だっけ?」

   海野、アクリルスタンドを持つ。

太田「(早口で)神楽R、月野望、愛知県

 出身22歳。7年前に4期生として加入

 しこれまで選抜入り4回。サイリウムカ

 ラーは紫。最近はドラマにも出演し」

海野「ストップ、ストップ! 

 ……そこまで聞いてねえよ」 

太田「ごめん。……つい」

海野「でも不思議だよな。昔はアイドルな

 んて興味ないって顔してたのに。

 ……人間変わるもんだな」

太田「……まあな」

   

◯(回想)・前の職場・机(夜)

   T『3年前』

   暗いオフィスで一人パソコンに向

   かう太田(24)。時計を見ると

   23時。ため息をつき作業を続け

   る。

上司、後ろから太田にファイルを渡す。

上司「太田、これ明日の朝までな」

太田「えっ、いやでも……」

上司「あ? 何か文句でもあんのか?」

太田「いえ……やります」

上司「(舌打ち)最初っからそう言えよ」

   太田の肩を叩き出口に向かってい

   く。

   太田、ファイルを手に天井を見上げ

   放心状態。

太田M「新卒で採用されたSNSのコンサ

 ル会社は毎日終電始発の超ブラック企

 業。

 そしてパワハラ三昧の毎日」

太田「……家でやるか」

パソコンを閉じ出口へ向かっていく。


◯駅のホーム(夜)

   太田、虚な表情でホームで電車を待

   つ。

太田M「入社3年。精神的にも体力的にも

 限界。何の為に生きて何の為に働いてい

 るのかも分からず、鬱の症状が出始めて

 いた」

   太田、ホームから線路を見つめる。

   遠くからホームへ電車が向かってく

   る。太田視点で見つめる線路と電車

   が向かってくるカットが何度も入れ

   替わる。

   電車の大きなサイレンに気がつき慌

   てて一、二歩後ろに下がる太田。

   そのまま駅を通過していく電車。


◯太田の昔の家

   部屋に大量の空き缶。散らかった部

   屋。

   太田、ビール片手にテレビをつけ

   る。

   テレビにアイドル番組が流れてい

   る。

太田M「あの日、家に帰って何気なくテレ

 ビをつけると神楽Rの番組が放送されて

 た」

   画面T『ニューシングル発売決定』

テレビの声「これから30枚目シングルの

 選抜メンバーの発表を行います」

太田「選抜。皆が歌えるわけじゃないん

 だ」

テレビの声「3列目、15番……月野望」

   画面の中、黒髪ポニーテール。

   ぱっちりした目元の望、驚いた表

   情。周りのメンバーから拍手。

画面の望「加入して4年……初選抜なので

 足を引っ張らないよう頑張ります」

   望、涙ながらに抱負を語る。

太田「こんな可愛い子が選ばれるのに4

 年」

   ×   ×   ×

(曲名)T『未来へ』テレビでパフォ

   ーマンスをする望。

   太田、望に見惚れ

   口元に持っていったビールを溢す。

太田M「衝撃だった。さっきまでとはまる

 で別人のように歌って踊るアイドル月野

 望の姿に、一瞬で心を奪われた。そし

 て」

テレビの歌「心に耳を傾けて、きっと答え

 はそこにあるから」

太田M「涙が止まらなかった。アイドル好

 きなんてダサい。学生時代そう思って

 た自分がこんなに心を動かされるなん

 て」

   太田、涙を流しテレビを見る。


◯前の職場

   オフィスの時計は8時20分。

   太田、出社。

   気づいた上司、近寄ってくる。

上司「太田! お前今何時だと思ってるん

 だ!」

太田「すいません。昨日遅かったんで。で

 も定時には」

上司「ったく。お前みたいな甘ったれが退

 職代行とか使ってあっさりやめてくんだ

 ろーなー」

太田「あーご心配なく。ほら」

   太田、上司に退職届を突き出す。

上司「は?」

太田「では」

   太田、お辞儀をして会社を出てい

   く。

上司「おい……ちょっと待て! 太田?

 太田君? 太田―!」


◯太田の昔の家

太田M「会社を辞めた俺はSNSのコンサ

 ル事業を1人で始めた」

   新品のパソコンを開封し作業。

   机には名刺「SNSコンサル

   太田陽平」と望のグッズタオル。

   ×   ×   ×

   部屋の中に増えていく望グッズ。

太田、パソコンに向かい仕事をする。

太田M「仕事が軌道に乗らず上手くいかな

 い時も彼女の笑顔を見るだけで不思議と

 力が湧いて何でもできる気がした」

   太田、望のポスターに目を移す。

太田「よし!」

   両手で顔を叩き仕事を続ける。


◯(戻って)・マンション・太田の部屋

   太田、1人ソファに座りDVDを持

   つ。

太田M「独立して3年。大音量でライブD

 VDを聴くためだけに思い切って防音性

 能の高い高級マンションに引っ越し」

太田「よーし、これで今日から心置きなく

 推し活できるぞー」

   太田、DVDを再生し曲に合わせて

   コールをするが途中で激しく咳き込

   む。


◯稽古スタジオ

   T『4期生・月野望(22)』

   スタジオでダンスの練習。

   他メンバーも数名。

   ×   ×   ×   

   望、汗を拭き水を飲む。レッスン用

   シューズを履き替えると底が擦り減

   っていることに気がつく。

   T『マネージャー 高橋茜(3

   5)』

   と男が入ってくる。

茜「丁度よかった。今いるメンバーに紹介

 するわね。新しいマネージャーの村雲

 君」

   T『新人マネージャー 村雲一也

    (27)』

村雲「村雲です。よろしくお願いします」

茜「村雲君は編集にも強いからSNS担当

も兼任してもらうからね」

メンバー一同「よろしくお願いします」

茜「明日のスケジュールはあとでグループ

 トークに流すから。よし、じゃあ次あっ

 ち」  

   茜、村雲を連れ出ていく。

   望、帰り支度をしていると遠くにい

   る美雪と目があう。

T『4期生・今井美雪(23)』

美雪、目を逸らしスタジオを出ていく。


◯マンション・望の部屋(夜)

   望、本棚のあるリビングに入り電気

   をつけベッドにうつ伏せにダイブ。

   寝返り仰向けに。

   棚に飾られた「未来へ」のCDを見

   る。

   ジャケットに1期生、後藤光が大き

   く写る。

望M「光さんに憧れて神楽Rのオーディシ

 ョンを受けて7年。光さん最後のシング

 ルで初選抜」

   立ち上がり洗面所に向かうい手を洗

   う。

望M「演技の仕事は好きだけど、歌もバラ

 エティもそこそこ。センターなんて夢の

 また夢」

   リビングに戻ってくる。

望「私……センターになりたくてアイドル

 やってるんだったっけ?」

   携帯が鳴る。画面に「新木朔」と表

   示。


◯朔の部屋

   朔、携帯片手に笑顔で話す。

T『元神楽R4期生 新木朔(23)』

朔「望? お疲れー。元気?」


◯マンション・望の部屋

望「うん、どうしたの?」

朔の声「明後日さ前言ってた喫茶店一緒に

 行かない?」

望「あーごめん……明後日の予定まだでて

 なくて。明日は休みってさっき連絡きた

 んだけど」

朔の声「えー。相変わらず神楽は連絡遅い」

望「うん……。なんか朔楽しそうだね。声

 が弾んでる」


◯朔の部屋

朔「あ、分かる? 卒業して今はやりたい

 ことし放題なんだよね。あ、別に卒業す

 る前が楽しくなかった訳じゃないんだけ

 どね」


◯マンション・望の部屋

望「うん。分かってる。見たよ。朔が作っ

 たファッションブランドの服。凄く可愛

 かった」

朔の声「ありがと。……望は、まだ卒業と

 か考えてないの?」

望「えっ、卒業? うーん。私、朔みたい

 に卒業してからやりたいことない

 し……」

朔の声「そう。だったらまだアイドル頑張

 ってゆっくり考えたら?」

望「うん。だいたい私、世間の常識とか知

 らな過ぎて今卒業したらちょっと不安か

 も」

朔の声「あー確かに。世間知らずというか

 ちょっと抜けてるとこあるよね望。あ、

 知ってる? トナカイって空飛べないん

 だよ」

望「バカにしてる? それくらい知ってる

 よ」

朔の声「ごめん、ちょっと舐めてたわ」

望「もう。トナカイは空想の生き物だよね」


◯朔の部屋

朔「えっ」


◯マンション・望の部屋

望「えっ?」

   沈黙が続く。

望「えっ。いないよね? トナカイ」

朔の声「う、うん。(軽いラップ調で)い

ないいない。トナカイいない」

望「だよねー」

朔の声「(笑いながら)うん。望はそのま

 までいてね」

望「どういうこと? あ、そういえばこの

 前」

   望、途中で声が掠れ咳払いをする。

望「(苦しそうに)ごめん。最近喉がちょ

っと、、、」

朔の声「大丈夫? 明日休みなんでしょ

 ? 今日は早めに寝て明日病院行ったら

 ?」

望「うん。そうする。ありがと。じゃあま

 たね」

   電話を切り。喉に触れる。


◯病院・外観

   渋谷耳鼻咽喉科と書かれた建物。

   太田、マスクをして咳き込みながら

   病院へ入っていく。

太田「引越しの疲れかな」


◯病院・院内

   太田、待合室の椅子に座る。向かい

   の席にマスクをつけた望が本を読ん

   でいるのが視界に映る。

太田M「この人、どっかで……」

受付の声「月野さん、診察室へどうぞ」

   望、立ち上がり奥へ。太田、驚きそ

   の姿を見つめる。

太田M「つ、つ、月野ってまさか月野望?

 あの目元、髪の長さにこのスニーカー」

   携帯を開き望のインスタで同じスニ

   ーカーを履いていることを確認。

太田M「間違いない。月野望だ。どうしよ

 う! 話しかける? いや絶対ダメ、落

 ち着け、落ち着け、俺」

受付の声「太田さん診察室へ……太田さ

 ん?」

太田「(声が裏返る)はい!」

太田、勢いよく立ち上がる。

   ×   ×   ×

   太田、待合室で望をチラチラ見る。

太田M「本物だ。この辺に住んでるのか

 な?」

受付の声「月野さん。お会計です」

   望、立ち上がる。太田、目で追う。


◯病院・外観

太田、外へ出てくる。前を歩く望の後

   を追いかけようと二、三歩歩く。


◯(回想)・テレビ画面

   画面に映る神楽Rの片桐永遠。

永遠「神楽Rからのお願いです。メンバー

 の居住エリアでの待ち伏せや追走行為は

 ストーカー行為に当たる可能性がありま

 す。節度を守った推し活をお願いしま

 す」


◯(戻って)病院・外観

   太田、立ち止まり首を振る。

太田M「何やってんだ俺……」

   目を閉じ深呼吸、反対方向へと歩

   く。


◯マンション・太田の部屋

   太田、震える手でカレンダーの4月

   2日に丸をつけ「記念日」と書く。

太田M「まさか本物に偶然会えるなんて。

 まだ握手会すら勇気がなくて行けてない

 のに」

   頭を抱え部屋をうろうろ歩く。

太田「とにかく落ち着こう」

ライブDVDをセットし大音量で流し

   始めサイリウムを振りコールを叫

   ぶ。

太田「(コール)超絶可愛い望!」


◯同・望の部屋

   ソファに座る望。隣の部屋から音が

   微かに漏れてくることに気づく。

望「防音性能高いって聞いてたのに。

 ん?」

   壁に耳を当てると神楽Rの楽曲と太

   田の叫ぶコールが聞こえてくる。

望「これって……」

   望、少し嬉しそうな表情。

望M「まあ気になる程じゃないし。いや待

 って。ファンが隣の部屋に? 

 流石にまずくない? 絶対バレないよう

 にしないと」

   棚にかけられたうさぎのロゴが入っ

   た帽子を手に取り頷く。

   机に病院の診断書。

   診断書には「渋谷耳鼻咽喉科 

   病名 声帯結節」


◯暗い部屋

   暗い部屋でパソコンの画面が光る。

   画面にはSNSのXの画面。

   アカウント名「GO」と

   表示されている。

   文字を打ち込む音が鳴り止むと、

   画面のカーソルが投稿画面に触れ

   クリックされる。


◯同・太田の部屋

   太田、ベッドで寝ている。

時計は11時。

携帯が鳴り、画面には「海野匠」

目を覚まし電話に出る。

海野の声「おい陽平! 生きてるか?」

太田「ん。朝からなんだよ」

海野の声「いや、もう昼だぞ。ったく社長

 は良いよな朝早くから起きなくて。って

 いうかまだ見てないのか? 今すぐX開

 けって」

太田「え?」


◯神楽Rの事務所・会議室

会議室に望、茜、村雲が座る。

望「捏造です!」

   望、机を叩き立ち上がる。

   机にはプリントされたアカウント

   「GO」の投稿。


◯GOの投稿画面

   「神楽R・月野望、

   白昼堂々デート」

   の文字と望が街で男性と手を繋いで

   いる写真。トークアプリの写真。

   以下望と黒塗りされた相手とのやり

   取り。

   望「今日は1日ずっと一緒にいれて

    幸せだったよ」

   相手「またデートしようね。今度は

    どっか泊まりで」


◯神楽Rの事務所・会議室

茜「落ち着きなさい」

望「でも!」

茜「……信じて良いのね」

望「疑ってるんですか?」

村雲「でもこのアイコンって……」

望「確かにこれは私のアイコン。でも私本

 当に心当たりが……。携帯……見ます?」

茜「……ううん。望を信じるわ。すぐに否

 定記事を出すよう上と掛け合うわ」

望「良かったー。さすが茜さん」

   望、椅子に座った瞬間長い咳き払

   い。

茜「大丈夫? 風邪?」

望「……実は昨日病院に行って」

   少し掠れた声で話し診断書を見せ

   る。

茜「声帯結節? これって」

望「大丈夫! ちょっと喉を使いすぎただ

 け」

茜「うーん……」

望「大丈夫です。私……」

   再び声が掠れ、咳払い。

茜「無理しない。こっちも相談してくる

 わ」


◯稽古スタジオ

   望、部屋に入ると30名近い神楽R

   のメンバーの視線が集まり静まり返

   る。

   T『キャプテン片桐永遠(26)』が

   怖い顔で近づいてくる。

望「永遠さん……あの私」

   望、後退り

永遠、望の両肩を掴む。

永遠「望……大丈夫?」

望「へ?」

永遠「茜さんに聞いた。あの記事捏造、な

 んでしょ?」

望「はい。私……絶対にしてません」

   望、真っ直ぐ目を見て真剣な表情。

永遠「うん。分かってる。あなた真面目過

 ぎて疑う方が難しいわよ」

   周囲がザワザワし始める。

   離れた所でヒソヒソ話す後輩メンバ

   ー。

後輩1「でもあのアイコン望さんのだった

 よね? もしかしてメンバーの誰かが?」

後輩2「まさか。……でもそれなら美雪さ

 ん? なんかあの二人ギクシャクしてる

 し。二人が話してるの見たことある?」

永遠「はい、はい。休憩終わり。続けるよ

 ー」

   永遠、手を叩き周りの雑談を止め

   る。

   美雪、遠くで望を見る。


◯ファミレス

   テーブルに太田、海野。放心状態の

   太田に代わり海野、配膳ロボットか

   ら二人分の食事をとる。

海野「とりあえず何か食え」

太田「……」

海野「アイドルだって恋愛ぐらいすんだ

 ろ。別に法律違反でもないんだし」

太田「そりゃそうだけど……」

海野「ならそんな落ち込むなよ。まさかお

 前、自分が付き合えるなんて思ってない

 だろ?」

太田「……まさか。そんなの分かってるっ

 て。分かってるはずなのにな」

海野「皆の、じゃなくて誰かのになんのが

 嫌なんだろ」

   海野、ご飯を食べながら話す。

太田、初めて海野に焦点が合う。

海野「片想いしてる間が幸せっていうだ

 ろ?あ、この際推し変してみるのは?」

太田「いや……俺はまだ月野望を信じた

 い」

海野「は?」

太田「事務所も否定してたし」

海野「そんなの9割嘘だろ」

太田「Xでも捏造だって投稿が」

海野「お前さ、SNSの専門家だろ? 

 冷静になれって。一部のファンが妄想

 で擁護してんの」

   海野、ご飯を食べ始める。


◯路地(夜)

望、マスクをして歩く。携帯の着信が鳴

 る。画面に「お母さん」と表示され電

 話に出る。

望「もしもしお母さん。どうしたの?」


◯名古屋・望の実家・リビング

美華「どうしたのじゃないわよ。あなた

 、大丈夫なの?」


◯路地(夜)

望「メッセージ送ったでしょ? 大丈夫だ

 から心配しないで」

美華の声「心配するわよ。ただでさえあな

 た家にいないんだから。たまには家にも

 帰ってきなさいよ」

望「うーん。考えとく」

美華の声「もう……。そういえば叶人も心

 配してたわよ」

望「叶人が? 意外。最近帰っても全然相

 手してくれないんだもん。小学生の頃は

 可愛かったのにな」


◯名古屋・望の実家・リビング

美華「望がなかなか帰ってこないから人見

 知りしてるのよ。ほらあの子今難しいお

 年頃だし」


◯路地(夜)

望「春から高校生だっけ? 思春期だ」


◯名古屋・望の実家・リビング

美華「そういうこと。とにかく頑張りすぎ

 ないようにね。あ、あと荷物送ってあげ

 るけど何か欲しいものある?」

望の声「うーん。芳光のわらび餅」

美華「わらび餅? あなた昔から好きよ

 ね。でもだめよ。あれ一日しか持たない

 から」

望の声「えー。久しぶりに食べたかった

 な」

美華「何か代わりに送ってあげるからちゃ

 んと受け取ってね。じゃあ頑張って」

美華、電話を切る。

   玄関のドアが開く音がして、高校の

   制服を着た叶人がリビングに入って

   くる。

美華「叶人? お帰りなさい。ご飯食べ

 る?」

   叶人、荷物をおいて料理が並べられ

   たテーブルに座る。

叶人「……うん」

美華「高校はどう?」

   美華、ご飯をよそった茶碗を叶人の

   前に置く。

叶人「……うん」

美華「うん、じゃわかんないでしょ。も

 う。あっそうだ」

   美華、手を叩いて叶人を見る。

叶人「え?」


◯路地(夜)

   望、電話を切り視線を前に向けると

   目の前に太田の姿。バックに望のグ

   ッズの四角い缶バッチがついている

   と気づき、帽子をバックから出し深

   く被る。


◯同・階段(夜)

   望、階段を登り始めると太田が急に

   俯いて歩くのに気づく。望、太田の

   さらに前に短いスカートの女性が階

   段を登っていることに気が付く。


◯マンション・外観(夜)

   望、マンションに入る太田を確認。


◯同・1階

   太田、エレベーターに乗り扉が閉ま

   る。

   望、エレベーターに行きボタンを押

   す。太田が乗ったエレベーターが6

   階で止まったことがランプで分か

   る。

望「もしかして今の……お隣さん?」


◯同・太田の部屋

   太田、リビングに入ってきてバック

   をおろしソファに座る。

   太田、おろしたバックについている

   望の缶バッチに目をやると携帯を取

   り出し、Xを開き「月野望」と検索

   し投稿をスクロールしていく。

   以下投稿内容。

「大した人気もないくせに男遊びかよ」

「さっさと卒業してくれ」

「月野望まだ推してるオタいんの?」

   太田、携帯をソファに置き、しばら

   く腕を組む。

太田「ライブDVD見るか」

   リモコンを操作してDVDを流す。

   画面にパフォーマンスをする望が

   映るが太田の表情は暗いまま。

   ×   ×   ×

   フラッシュ。

   Xに投稿された望と男が手を繋いで

   いる画像。

   ×   ×   ×

   太田、しばらくテレビ画面を眺めて

   からリモコンで電源を切り、そのま

   まソファに顔を埋めて叫ぶ。

太田「あーーー」


◯渋谷・スクランブル交差点

   交差点を大勢の人が行き交う。


◯同・渋谷駅改札

   叶人、バックを背負い改札から出て

   くる。携帯を見ながら辺りを見渡

   す。派手な服装をし携帯で話しなが

   ら歩く20代後半の男性GOと肩が

   ぶつかる。

叶人「あ、すいません」

   叶人、頭を下げる。

GO「ちっ、気いつけろや」

   GO、叶人を睨み電話をしながら去

   っていく。

   叶人、去っていくGOを見る。

叶人「東京怖っ。つーか宮下公園ってどこ

 だよ」

   叶人、スマホのトークアプリ画面を

   見る。画面には望から「事務所に呼

   ばれてるから13時に渋谷の宮下公

   園待ち合わせね」とメッセージ。

   叶人、今度は背中側から誰かにぶつ

   かられる。振り返り頭を深々下げ

   る。

叶人「すいません!」

太田「いえいえ、こちらこそ。頭上げて」

   叶人、頭を上げ太田を見る

太田「大丈夫?」

叶人「……はい」

太田「……じゃあ僕はこれで」

   太田、軽くお辞儀をして去ろうとす

   る。

   叶人、去っていく太田のバックに望

   のグッズの四角い缶バッチがついて

   いると気づく。

叶人「あっ」

太田「え?」

   太田、振り返る。

叶人「あ、いえ」

   叶人、両手を横に振る。

   太田、再び去ろうとする。

叶人「あっ、あの……宮下公園ってどっちっすか?」


 
 
 

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