喫茶レトロ〜記憶の断片〜前編
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- 5月10日
- 読了時間: 22分
更新日:5月20日

いじめっ子からゲーム機を奪われた少女を助けた小学生の忠司は泥棒扱いされたショックから記憶を失ってしまう。高校生になった忠司は喫茶店で記憶の手がかりを見つけ失われた過去が動き出す
前編スタート
◯町・外観
国道に横断歩道と歩道橋。電球式の
信号機の青信号が点滅。通り過ぎる
消防車。
緑が広がる公園に時計台と噴水。
〇同・伊藤忠司の家・外観
家に駆け込むT「伊藤忠司(11
)」。
忠司「ただいまー」
すぐバックを背負い玄関から飛び
出す。
忠司「行ってきまーす」
泰子「待ちなさい忠司! 宿題は?」
玄関から顔を出すT「伊藤泰子(37
)」。
忠司「ごめん母さん、急いでるから!」
泰子「もう。遅くなるなら携帯で連絡ね」
忠司「了解!」
敬礼し走り去る。泰子、笑顔で見
送る。
〇同・公園
公園で遊ぶ子供たち。
◯同・同・ベンチ
長い前髪にメガネ、首からカメラを
ぶら下げた少女がゲームをして
いる。
ゲーム機本体にキャラクターのシー
ル。そこへ背の高く長袖のタートル
ネックを着た少年、 T「黒田煌太(11)」。
煌太「おい」
少女「……」
煌太「おい! 聞いてんのか?」
少女、煌太を見上げる。
煌太「へー、良いもん持ってんじゃん」
ゲームの画面を覗き込む。
少女、ゲーム機を体の後ろに隠す。
煌太ゲーム機を取り上げる。
少女「ダメ!」
ゲームを取り返そうとするも煌太に
押し倒されベンチから落ちる。
煌太「また学校でいじめられたくなかった
ら誰にも言うなよ」
煌太、公園から出ていく。忠司、公
園から出ていく煌太を見つける。
公園内に地面に倒れた少女を発見。
忠司、携帯で時間を確認するがしま
い駆け寄る。
忠司「おい、大丈夫か?」
少女、忠司をみて頷く。忠司、手を
貸してベンチに座らせる。

忠司「また煌太か?」
少女、頷く。
忠司「今度は何やられたんだ?」
少女、話そうとするも躊躇し口ごもる。
忠司「大丈夫、言ってみ」
腰を落とし目線を合わせる。
少女「ゲーム……取られちゃった。パパが
買ってくれたのに」
忠司「なんで公園でゲームしてんだよ」
少女「だって……」
黙り込む。忠司、立ち上がる。
忠司「よし! 取り返すか」
少女「誰かに言ったらもっといじめる
って」
忠司「バレなきゃ良いんだろ?」
少女「でも……」
忠司「いいから帰っとけ。どうせまたあそ
こだろ」
少女をおいて公園出口へ走っていく
が一度止まって振り返る。
忠司「なあ!」
少女、顔をあげ忠司を見る。
忠司「お前も思ってることは、はっきり言
えるようになれよ。じゃないと舐め
られたままだぜ」
少女「……うん」
忠司「今すぐは無理か、まずは見た目から
だな。メガネ外すとかさ」
少女「……その方が似合う?」
忠司「えっ、あー、うん。……じゃあな」
忠司、再び公園の出口へ走る。
忠司「似合う似合わないじゃないんだけ
どな」
少女、その姿をカメラで撮る。
◯同・空き家
忠司、木に囲まれた空き家に到着し
南京錠が付いた入り口を素通り。
立ち入り禁止と書かれた柵を飛び越
え、小石をポケットに入れ2階の
窓にかけられた梯子に登る。
◯同・同・2階
窓から明かりが差し込む薄暗い部屋
で煌太、半袖シャツを着た小学生
2人がソファに座って話す。

煌太「じゃーん!」
2人にゲーム機を見せる。
小学生1&2「おおー」
小学生1「もう買ってもらったのかよ?」
煌太「……まあな」
小学生2「うちの親なんかケチでよ」
忠司、窓の外の梯子から会話を聞く
忠司「あれか」
ポケットから小石を取り出して部屋
のドアに向かって投げつけ
「コツン」と音が鳴る。
煌太「ん? なんだ?」
小学生1「やばい! 誰かきた?」
小学生2「いや、一階からは入れない
はず」
部屋の入り口のドアを開け階段の方
を覗く3人。忠司、窓から2階
に入り
ソファに置かれたゲーム機をバック
に入れ、再び梯子で下に降りようと
する。
◯同・忠司の友達の家
忠司の友達1「遅いな、忠司」
忠司の友達2「電話するか」
携帯を取り出し忠司に電話をか
ける。
◯同・空き家・2階
梯子に足をかけたところで忠司の携
帯が鳴る。
忠司、ポケットからキッズ携帯を取
り出し着信を切る。
煌太、着信音に気づき後ろを振り
返る。
煌太「忠司?」
忠司「やべっ!」
携帯を窓の中へ落とすがそのまま梯
子を降りる。
煌太、ふとソファに目をやりゲーム
機がないことに気がつく。
煌太「やられた!」
忠司、梯子を外し走り去る。煌太、
窓から下を見て梯子が外されたこと
に気づく。
小学生1、窓際に移動する時に忠司
が落とした携帯を踏んで転倒。
携帯はソファの下へ入る。
◯同・国道
忠司、国道沿いの歩道を走る
◯同・町外れの空き家
2階の窓から木に乗り移る煌太達。
◯同・国道・横断歩道
忠司、息を切らしながら横断歩道に
たどり着き信号のボタンを連打。
3人が追いかけてくるのが見える。
煌太「逃げられると思うなよ!」
忠司「捕まったらやばそう。そもそも顔が
バレた時点でアウトか」
歩道橋を登り始める。そのタイミン
グで車道側の信号が黄色に。
煌太、歩道橋を登り、残り2人に横
断歩道を渡るよう指示。
忠司、歩道橋の反対側の階段を降り
ようとすると回り込んだ2人が
階段下にみえ引き返そうとするが、
そこに煌太がおり挟み撃ちになる。

煌太「ここまでか……」
忠司、歩道橋の上で3人に囲ま
れる。
◯タイトルロゴ『喫茶レトロ〜記憶の断
片〜』
◯同・同・同
T『六年後』
横断歩道のLED式の青信号。杖を
ついたお婆さんと、荷物を持って横
断歩道を
渡る学生服のT『伊藤忠司(17)
』。横断歩道を渡り切る。
お婆さん「ありがとね」
忠司「お家まで持ちますよ?」
お婆さん「近くだから大丈夫よ」
忠司「そうですか、お気をつけて」
荷物をお婆さんに返して見送りスマ
ホを取り出し時間を確認する。
忠司「やばっ!」
引き返そうとするも赤信号に気づき
歩道橋を駆け上る。
サイレンを鳴らした消防車が下を通
り過ぎる
◯同・忠司の家
忠司、自宅に駆け込みまた外へ出て
くる。伊藤泰子(43)が顔を
出す。
泰子「忠司、出かけるの?」
忠司「はい。友達と勉強しに。遅くなる時
は連絡しますね」
泰子「分かった。行ってらっしゃい」
泰子、暗い表情で見送る。
◯同・喫茶レトロ・外観
建物に『喫茶レトロ』と書かれた小
さい看板と5周年のポップ。
◯同・同・店内
レトロな雰囲気の店内。口髭を生や
しアロハシャツを着た店のマスター
(40)が歌を口ずさみながら
コーヒーを淹れる。
バイトのT「山田佳奈(17)」が
コーヒーをお客さんのテーブルへ
運ぶ。
パフェが置かれたテーブルに座る黒
髪に整った顔立ちの制服姿の女子
高生、
T「上田あすか(17)」が本を読
む。少し離れたテーブルに学生服を
着崩した
見た目のチャラい茶髪の男子高校生
、T「斉藤亮(17)」が
メロンソーダを飲み携帯を見る。
忠司、店内に入ってくる。

マスター「いらっしゃい。ってなんだ忠
司か」
忠司「なんだはないでしょ。亮は?」
マスター「チャラ男ならとっくに」
マスター、奥の席を指差す。忠司、
席へ向かって歩き出す。
マスター「注文」
忠司「いつもの」
忠司、途中で食器を下げている、背
が高くパンダの被りものをした店員
と道を譲り合い、数秒見つめあって
からすれ違い席に着く。
あすか、その姿を本越しに見つめる
。亮、忠司に気がつく。
亮「よ」
忠司「悪い! 待たせた」
手を合わせて謝る
亮「まあ座れ。で、今日の言い訳は?」
忠司、席につく。
忠司「え? 迷子を交番に届けて、その帰
りに公園の捨て猫に餌をやって。
で、公園から出たらお婆さんが」
亮「もういい。毎回ベタな話ししやが
って」
亮、メロンソーダを飲む。
忠司「本当なんだって!」
亮「分かってる。長い付き合いだろ? い
い加減俺みたい楽に生きたら?」
忠司「誰がお前みたいなチャラ男に」
忠司、置かれたコップの水を飲む。
亮「それ飲みかけ」
忠司「うぇっ!」
水を吐き出す忠司。佳奈が席に
くる。
佳奈「アイスコーヒーです。ブラックでよ
ろしかったでしょうか?」
忠司「あ、はい」
テーブルを拭きながら答える。
亮「ブラックなんかよく飲めるな」
忠司「……飲みづらいから良いの」
亮「どゆこと?」
忠司「良いから、さっさと試験勉強」
亮「はいはい。あーどうせなら男子の憧れ
上田さんから教わりたい」
忠司「上田あすか……ね」
奥の席にいるあすかを見てヒソヒソ
と話し始める二人。

忠司「何で毎日いるんだ?」
亮「もしかして俺に」
忠司「それはない」
忠司、バックからノートを取り
出す。
亮「まだ何も言ってないだろ。つーかかあ
のパンダは何者?」
別のテーブルへコーヒを届けるパ
ンダ。
忠司「店員」
亮「いや、なんであんな被り物してんのか
って話」
忠司「気になるなら直接聞いてこい」
亮「聞いたよ」
忠司「聞いたのかよ」
亮「けどあいつ一言も喋らねぇんだよ」
忠司「俺も声聞いたことないな」
亮「だろ、絶対なんかあるぜ。もしかした
らあいつ」
忠司「それはない」
亮「いやまだ何も」
忠司「良いから勉強」
亮「へいへい」
× ×
×
勉強を続ける二人。
× ×
×
時計は21時。亮の携帯が鳴り画面
に『母ちゃん』。嫌な顔をし電話に
出る。
亮「もしもし」
亮の母の声「あんたこんな時間まで何して
んの!」
亮、声量に携帯から耳を離す。
亮「忠司と勉強してから帰るって言ったろ
……え、いや本当だって!」
亮、忠司に携帯を渡す。
忠司「えっ?」
亮、手を合わせて忠司に頭を下
げる。
忠司「ったく。こんばんは伊藤です。……
はい。ちゃんと勉強してますよ。…
…はい。
もう帰ります。はい、では」
通話を切って亮に携帯を返す。
亮「サンキュー。にしてもなんで実の息子
を信じないかね」
忠司「日頃の行いだろ。仲が良くて良いじ
ゃない」
勉強道具を片付け始める二人。
亮「仲良く見えんなら病院紹介するぜ。…
…まだ親と上手くいってないの?」
亮、手を止めて忠司をみる。
忠司「上手くいってる。けど」
亮「けど?」
忠司「どうしてもまだ他人に感じるとい
うか」
亮「記憶喪失だっけ?」
忠司「……ああ」
◯(回想)・病院・診察室
T『6年前』
病院の診察室で頭に包帯を巻いた状
態で座る忠司(11)。
後ろに立つ泰子(37)と伊藤敬(
38)。
三人の正面の椅子に座りモニターを
見る医者。
医者「解離性健忘ですね」
泰子「かっ、かいりせい?」
医者「いわゆる記憶喪失。ただ脳に
損傷もみられないので一過性かと」
敬「つまり記憶は戻ると?」
医者「絶対とは言い切れませんが」
泰子「私たちのことも思い出せない?」
泰子、忠司の肩を掴む。
医者「そう焦らずに。精神的なストレスや
トラウマが原因と考えられます。何
か心当たりは?」
泰子「学校でトラブルを抱えてたみたいで
すが、この子何も言わないので」
医者「少し環境を変えて安静にしてみるの
も良いかもしれませんね」
◯(戻って)町・喫茶店・店内
忠司「カウンセリングとか転校とか試した
けど、両親のこともまだ……」
沈黙の後、亮ため息をつく。
亮「お前さ、設定までベタだな」
忠司「設定じゃねーって」
亮「良いじゃん。その転校先で幸運にも俺
に会えたんだから」
忠司「どうだか」
亮「照れちゃって。さ、帰ろうぜ」
会計を終え帰ろうとする二人。
佳奈「これ、昨日の忘れ物です」
忠司、バックを受け取る。
忠司「あっ! ありがとうございます」
亮「何のバック?」
忠司「体操着。ここにあったのか」
亮「忠司のってよく分かりましたね?」
佳奈「いつもの席にあったので」
忠司「助かりました。じゃあマスター
また」
マスター「はいよ」
忠司、亮店を出る。あすか、その様
子を奥の席で見つめ本を閉じる。
◯同・同・外観(夜)
忠司、亮、外に出てくる。バンダの
店員、外の掃除をしている。
亮「お! チャンス」
亮、背後からパンダの被り物を取ろ
うとする。
パンダの店員、首筋まで上がったと
ころで手で押さえ被り直す。
パンダの店員の首筋に火傷のような
アザ。
亮「惜しい。もうちょい」
忠司「やめろって。すいません大丈夫です
か?」
忠司、亮をひっぱり引き離す。パン
ダの店員、大丈夫とジェスチャーを
送る。
亮「いつかその顔みせてもらうからな!」
忠司、会釈をして亮と帰っていく。
その姿を見つめるパンダの店員。
◯同・忠司の家・玄関(夜)
靴を脱ぐ。そこへ泰子やってくる。
泰子「おかえりなさい」
忠司「ただいまです」
泰子「ご飯食べる?」
忠司「食べます。荷物置いたら行きま
すね」
忠司、玄関に上がり部屋に向かう。
◯同・同・忠司の部屋
電気をつけ荷物を置き一旦ベッドに
寝る。そして体操着のバックを見つ
める。
忠司「洗わないと」
立ち上がり、バックを開くと見覚え
のないケースが混じっている。
忠司「何だ?」
ケースを開けると数十枚の写真とゲ
ーム機が入っていた。写真を手に
取る。

忠司「えっ? 俺?」
写真には喫茶店にいる忠司。他の写
真も忠司が写る。今度はゲーム機を
持つ。
忠司「これって」
ゲーム機を裏返すとキャラクターの
シールが貼られている。
それをみた瞬間目眩がし頭を抑えて
座り込む忠司。
× × ×
フラッシュ。六年前の空き家でゲー
ムをしている黒田煌太の横顔と
公園にいる少女の顔
× × ×
『コンコン』とノックの音が響き
渡る。
目眩が治りドアを見る。
泰子「忠司―ご飯は?」
ドア越しに泰子の声
忠司「はい、今行きます」
去っていく泰子の足跡。
忠司「今のは黒田煌太? それと……」
◯同・喫茶店・外観
◯同・同・店内
席に座っている忠司と亮。
亮「どうした? 休みに呼び出して」
亮、パフェを食べる。
忠司「思い出したんだよ」
亮「お前に貸してた千円?」
忠司「借りてない」
亮「じゃあ何?」
忠司「六年前の記憶」
亮「えっ! じゃあ全部思い出したのか
!?」
大きな声に気付き二人をみるあ
すか。
店内にいるマスター、パンダの店員
も二人を一瞬見る。
忠司「いや、黒田煌太っていう同級生がい
たことだけ」
亮「それだけ?」
忠司「それだけ」
亮「何だよ。……でも良かったな」
忠司「ああ」
亮「もっと喜べよ。でもなんで?」
忠司「昨日帰りにバック受け取ったろ?
その中にこれが」
ゲーム機を取り出しテーブルに
置く。
亮「なに? 最近ハマってんの?」
忠司「俺のじゃない。でもこれを見た瞬間
に記憶が戻ったんだ」
亮「へー。じゃあこれ黒田煌太のか?」
忠司「多分」
亮「記憶取り戻すならそいつに会うのが一
番じゃねぇか?」
忠司「だよな」
亮「てか、なんでバックに?」
忠司「あっ! これも入ってたんだ」
写真を取り出す。
亮「忠司の写真?」
忠司「よく見てみ」
亮「えっこわっ! 全部この店の中じ
ゃん」
忠司「だろ? つまりこのゲームが黒田煌
太のものなら」
亮「この写真も黒田煌太が?」
忠司「おそらく」
亮「どこだ黒田煌太?」
店内を見渡す二人。その視界に歩い
てくる制服姿のあすか。
あすか「黒田煌太って言った?」
亮「え? あ、はい」
あすか、ゲーム機と写真を見る。
あすか「これは?」
忠司「え? これは……」
あすか「いいから早く答えて」
忠司・亮「はい……」

× × ×
席についたあすかに事情を説明する
× × ×
あすか「忘れ物……」
小さい声で呟く
亮「あのーそろそろ説明してもらって
も?」
あすか「え? 何を?」
忠司「何で急に話に入ってきた?」
あすか「ああ。黒田煌太を探してるんでし
ょ? 結論から言うと黒田煌太はも
う死んだ」
忠司・亮「えっ!」
あすか「私の友達の友達の友達から聞いた
話だから間違いない」
亮「友達の友達の友達って……他人で
は?」
あすか、亮を睨みつける。
亮「すいません」
あすか「聞き覚えのある名前が聞こえたか
ら話を聞いただけ」
忠司「で黒田煌太はいつ死んだんだ?」
あすか「六年前。正確には行方不明だ
けど」
忠司「俺の記憶喪失と同じタイミング?」
あすか「六年前だから知り合いの間ではも
う死んだって噂」
亮「どんなやつだったんですか?」
忠司「何で敬語?」
あすか「いじめっ子よ。お前のものは俺の
ものみたいな」
忠司「いじめっ子……」
忠司、ゲーム機を見つめる。
亮「え? じゃあ誰がバックにこれを?」
あすか「さあ? 私は読書の続きがあるか
らこれで」
あすか、立ちあがろうとする。
忠司「ちょっと待って。良かったら手伝っ
てくれない?」
あすか「何を?」
忠司「黒田煌太探し」
あすか「聞いてた? あいつは死んだの」
忠司「でも確証はない」
あすか「……そうだけど」
忠司「上田さんの友達の話も気になる
けど、
黒田煌太を追うのが記憶を取り戻す鍵にな
ると思う」
亮「友達の友達の友達ね」
あすか、亮を睨む。亮、目をそ
らす。
あすか「……少しなら」
忠司「ありがとう。助かる」
亮「よーし。で、何から始める?」
忠司「やっぱこのゲームと写真を誰がバッ
クに入れたか。かな?」
亮「なら一番可能性あんのはバック渡して
くれた店員?」
マスターのもとへ向かう三人。
マスター「ん? どうした? 珍しいな」
あすか「お父さん、山田さんは?」
忠司・亮「お父さん!?」
マスター「ん? 知らなかったのか? そ
っくりだろ」
忠司・亮「いや全く」
マスター「そうか? まあ、あすかは天国
のママ似だな」
あすか「どうでも良いけど、山田さん
は?」
マスター「佳奈ちゃん? そろそろ来る時
間だけど? 何か聞いてる?」
パンダの店員に話を振るが、首を横に振る
。そこへやってくる佳奈。
佳奈「おはようございます」
マスター「ナイスタイミング」
あすか「山田さん。これに見覚えは?」
佳奈に写真とゲーム機が入っていた
ケースを見せる忠司。
佳奈「えっ、ああそれなら店に落ちてて、
忠司君の写真が入ってたから、バッ
クと一緒に返そうと思って。……ま
ずかったです?」
亮「てことはケースは意図的に入れたわけ
じゃないってこと?」
あすか「そういうことね」
忠司「ちなみにどこに落ちてました?」
三人を奥の通路に案内する佳奈。
佳奈「ちょうどこの辺り」
あすか「トイレに行く時に落としたのかし
ら?」
忠司、入り口の方を見る。
マスター「ほらほら。お客さん増えてきた
からそろそろ佳奈ちゃん解放して」
佳奈「急いで準備しますね」
軽くお辞儀をしてその場から去る。
亮「振り出しか。どうする?」
忠司「……薄暗い部屋と公園」
亮「何それ?」
忠司「薄暗い部屋にいる黒田煌太と一緒に
眼鏡をかけた女の子が公園にいたこ
とも思い出したんだ」
あすか「公園の女の子……。その場所
は?」
忠司「薄暗い部屋は分からない、公園は多
分あの時計台と噴水がある公園」
亮「あの公園か。ガキの頃よく行ってたな
。何か思い出すかもだし行くか?」
◯同・国道・横断歩道
歩いて信号を渡る三人。

亮「いやー。上田さんと親しくなれるなん
て光栄だな」
あすか「いつ誰が誰と親しくなったっ
て?」
亮「え? こうして仲良く喋ってるじゃ
ないですか?」
忠司「上田さん何で休みなのに制服?」
あすか「……これが一番落ち着くの」
小さい声で答える
亮「えー。私服も見てみたいなー」
あすか「黙れチャラ男」
亮「なんか俺に厳しくないっすか?」
◯同・公園・ベンチ
忠司「間違いない。俺はここでその子に会
ってる」
亮「その子も同級生だろ? 見た目は?」
忠司「前髪長くて眼鏡もしてたから顔が思
い出せないんだけど、カメラを首か
ら下げてたな」
亮「それだけだと流石になー」
三人の後ろから派手な私服を着た坂
口真希(17)が話しかけてくる。
真希「もしかして上田さん?」
あすか、真希の顔を見て気まずそう
な顔をする。
真希「やっぱりそうだ! 面影あったから
話しかけちゃった。小学校以来?
元気? ってかめっちゃ美人になっ
たね」
圧倒される三人。
亮「えっと。……上田さんのお友達?」
真希「友達友達! 小学校が一緒だっ
たの」
あすか「久しぶりね坂口真希さん」
真希「うん。ってか何でフルネーム? う
ける! なんかエモいね。小学校の
頃は色々あったけど楽しかったな。
……またみんなで集まれると良い
よね」
一瞬暗い表情になる。
あすか「そうね」
真希「あっごめん待ち合わせあるんだ
った」
女、去り際に忠司をみる。
真希「ん? 君どこかで……」
あすか「急いでるんじゃないの?」
真希「そうだった! じゃあね」
女、歩いて出口へ去っていく。
亮「まさか今のが眼鏡の少女?」
忠司「いや記憶と違い過ぎる」
あすか「そう? 見た目なんて六年あれば
変わるものよ。特に女子は」
亮「で何か思い出した?」
忠司「いやさっぱり。付き合わせたのに
悪い」
亮「まあ、焦ることないだろ」
◯同・同・出口
真希「えっ?」
立ち止まり携帯を開く。
真希「佳奈から送られてきたこの写真、誰
かに似てる」
携帯のトーク画面、山田佳奈の名前
。T「ついに撮れた!」というメッ
セージと少し暗い部屋に立っている
男の全身と横顔の写真。

真希「まあ、そんなわけないか」
携帯を閉じて再び歩き出す。
◯同・国道
公園から帰り道を歩く三人
亮「そういえば最近火事があったらし
いぜ」
忠司「それが?」
亮「いや、どうやら原因は携帯らしくて」
あすか「ああ、リチウム電池」
忠司「リチウム電池?」
あすか「悪い環境で放置すると、携帯の電
池が発火することがあるの」
亮「勉強になったか?」
忠司「テレビで見ただけだろ」
亮「バレた? まあ、幸い何年も放置され
た町はずれの空き家で被害者はいな
いって」
あすか「じゃあ、なんで携帯が?」
亮「確かに」
忠司、立ち止まる。
忠司「町はずれの空き家?」
二人を置いて走り出す。
亮「忠司? どうした。おい、待てよ!」
追いかける二人。
◯同・町はずれの空き家・外観
木に囲まれた空き家に到着する
三人。
2階窓部分から少し焦げていること
が分かる程度で十分に原型を保って
いる。

あすか「ここって」
亮「どうした急に?」
忠司「火事の現場ってここだろ?」
亮「ん? ああ、確かに燃えた跡があるな
。でもなんで?」
忠司「昔よくここに来てたはずなんだ」
ドアが開き、オーナーの男が現
れる。
オーナー「なんだ君たち? また野次馬
か?」
忠司「いえ、僕たちは別に」
亮「おじさんこそ、誰です?」
オーナー「ここのオーナー。参ったよ
。まあこんな物件じゃ借り手も
見つからないし、いっそ解体し
ようかな」
玄関に南京錠をかける。
亮「なんで南京錠なんかしてんすか?」
オーナー「ああ、ドアの鍵が壊れてるんだ
よ。借り手が見つかれば直すつもり
だったけどここ数年は内見も一件。
しかもこんな町外れで喫茶店を開き
たいっていう変わりもの」
あすか「喫茶店?」
オーナー「こんな場所で開いてもねえ」
忠司「中って見せてもらえないですか?」
◯同・同・二階
二階に向かう階段を登る四人
亮「一階は普通でしたね?」
オーナー「燃えたのは2階だけだからね」
二階につきドアを開くと薄暗い部屋
に窓からの光。黒焦げになったソ
ファ。
亮「うわ、ひでえ匂い」
充満した火事の後の匂いに鼻をつ
まむ。
忠司「この部屋……」
オーナー「ソファの下にあった携帯が出火
原因。一体誰がこんなところに携帯
落としたんだか」
亮「え? オーナーさんのじゃなくて?」
オーナー「違うよ。ほらこれがその携帯」
燃えて変形したキッズ携帯を取り
出す。
あすか「キッズ携帯?」
オーナー「そ。子供が入ってきたことあっ
たかな?」
忠司、キッズ携帯を見つめる。
忠司「それ、見せてもらっても?」
オーナー「別に」
忠司、恐る恐る携帯を受け取る。そ
の瞬間目眩がしその場に座り込む。
亮「忠司!?」
× × ×
フラッシュ。六年前の小学校の教室
でクラスメイト数名から「泥棒」と
連呼される忠司。そこにいる少し不
安げな煌太と俯く前髪の長い少女。
× × ×
フラッシュ。町はずれの空き家の外
でで倒れてる煌太と血がついた忠司
の手。
× × ×
亮「忠司! おい忠司!」
亮、背中を支える。忠司、意識が戻るが呼
吸が荒く小刻みに震え出す。
忠司「まさか俺が黒田煌太を? そんな
……」
倒れて意識を失う。
◯同・病院・病室(夜)
外が暗くなった病室のベッドに横た
わる忠司。泰子、椅子に座って
いる。
忠司「……ん」
目を覚ます。
泰子「忠司! よかった」
安堵の表情を浮かべる。
忠司「……ここは?」
泰子「病院。気を失って運ばれたの」
忠司「そうですか。心配かけてすいま
せん」
泰子「……。先生呼んでくるわね!」
悲しそうな表情を浮かべた後、明る
く振るまい部屋から出ていく。
亮、会釈をして入れ違いに入って
くる。
亮「よ。大丈夫か?」
忠司「おう、いたのか」
上半身を起こす。

亮「健気に待ってた親友にそれはないだろ
。それより……いつもあんな感
じ?」
忠司「何が?」
亮「何がって……。流石に他人行儀過ぎね
ーか?」
忠司「……どう接していいか分からない」
亮「難しく考えすぎじゃね?」
忠司「じゃあお前はすぐ受け入れられんの
かよ! 記憶にない人からいきなり
親だって言われたことないだろ」
亮「ごめん。無神経だった。……でも
どうした? お前らしくないぞ?」
忠司「俺らしいってなんだ? 昔の自分が
どんな奴だったかすら自分で分から
ねえんだぞ?」
亮「忠司……」
忠司「黒田煌太は……俺が殺したかも」
亮「はあ!?」
忠司「思い出したんだ。あの2階の部屋が
、黒田煌太がいた部屋だ」
亮「ってことは携帯も黒田煌太の?」
忠司「分からない。でもあのゲームの本当
の持ち主は眼鏡の女の子」
亮「本当の持ち主?」
忠司「言ってたろ。黒田煌太はいじめっ子
だって」
亮「えっ、てことは黒田煌太がその子のゲ
ームを奪った?」
忠司、頷く。
忠司「俺は昔その子のゲームを取り返すた
めに空き家に行った。あそこは2階
から侵入できて秘密基地みたいにな
ってた」
亮「で? 取り返せたのか?」
忠司「いや、結局失敗して次の日学校行っ
たら……俺はゲームを盗もうとした
泥棒扱いされてた」
亮「お前は取り返そうとしただけ! 何で
本当のこと言わないんだよ」
忠司「言えなかったんだ。女の子が俺に助
けを求めたことがバレたら、もっと
いじめられるって。小学生だったし
、どうしていいか分からなかった」
亮、壁を叩く。
亮「納得いかねー」
忠司「その日から皆に無視されるようにな
って、精神的にかなり苦しかった。
そしてもう一つ思い出したのが……
黒田煌太が空き家の外で血を流して
倒れていたこと」
亮、驚く。
亮「……それで自分が殺したかもって?」
忠司、頷く。
忠司「恨みがあったのも、無視されて精神
的におかしくなってたのも事実だし
状況から考えて」
亮「でもお前に限って」
忠司「だから分かんないだろ! 記憶を無
くす前の俺がどんなやつかなん
て!」
亮「バカかお前! 記憶がなくたって忠司
は忠司だろ。ずっと一緒にいた俺が
一番よく分かってる。いつも誰かの
ために馬鹿みたいに世話焼いてたろ
。昔だってその女の子のために動い
てんだったらよ、お前の根っこの部
分は何も変わっちゃいねぇよ!」
忠司「でも……」
亮「でもじゃねぇ! お前は……伊藤
忠司は今も昔もこれからも! 人を殺した
りなんかする弱い男じゃねえ」
忠司、涙が溢れ俯きしばらく沈黙
忠司「亮……俺、本当にやってない?」
亮「安心しろ。俺が保証する」
忠司「そうか。ありがとう……」
忠司、小さい声で涙ながらに呟く。



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